通信費削減のためスマホからガラケーに機種変した(下)

一夜明けた4月29日の昼下がり、私は中古のガラケーを求めて市内の国道バイパス沿いを自転車で駆けていた。


遡ることその数時間前、寝床の中で私は自分がかつて所持していたauのガラケーのことを思い起こしていた。

"あれは確か数年前、初めて買ったdocomoのスマートホンの前がauだったよな…。確か横長の画面でPCサイトビューアーが載ってて…。"

自分がかつて使っていた携帯電話の機種を思い出すのは、さながら昔の女を思い出すかのような一種独特のノスタルジーを感じさせた。実際の目的は「前使ったガラケーに機種変すれば新たな端末を買うことなく目的を達せられる」という俗っぽいものだったが。(あと女性遍歴とかほぼ皆無だし)

ネットで調べた結果、その機種は「W51H」であることが分かった。Wikipediaで確認。2007年発売。縦横両画面対応。指紋センサーをタッチパッド風に使ってPCサイトビューアーのカーソル操作ができるのが売りだった。この頃は画期的に思えたが、それから数年後のタッチパネル全盛の今から見ると隔世の感がある。

そんな中、Wikipediaの記載をよく見ると、こんなことが書かれていた。

「800MHz(BC3) 2012年7月23日より使用不可」

…そう言えば、去年auの古い機種が使えなくなるっていうニュースがあったな。古いって言ってもそんなに古くないのに、っていう不満が出たとか。…まさかこの機種も…?

auの公式ホームページを確認したところ、

800MHz帯の周波数再編に伴う「CDMA 1X」などのサービス終了等のお知らせ〈別紙〉
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2010/0405a/besshi.html

果たしてこの中にW51Hの記載があった。ガーン。当時最新鋭だと思って使っていたW51Hは、今はもう見捨てられた旧時代の遺物と化していたのだった。そしてそのリバイバル計画もあえなくオジャンとなった。(もっともその後の2度の引越しで本体自体どこにいったのかもはや不明なのだが。)


自転車で走る途中、WILLCOMの店があった。あーWILLCOMも地味に頑張ってるなぁ。『ほぼスマホ』との2台持ちを考えるとフリスクフォンなんかは理想的なんだけどなー。でもMNPできないから今のところは問題外。


私は市の南東部にある住宅街の中の中古品の店を目指していた。あそこなら確か中古携帯も置いてあったはず。そこは基本は古書店なのだが、DVDやゲーム、フィギュアなど様々なものを置いてある店であり、前にこの市に住んでいた時も数回通った店であった。あの時売った初代PS3(20GB)は今誰の手にあるだろうか。

程なく店に着いた。数キロあったが電動アシスト自転車なので疲れはさほど無い。店内は休日なので小中学生でいっぱいだった。
入り口からすぐに携帯電話コーナーを発見。ショーケースの一番下、各種スマートホンに押されるようにしてガラケーが並べられていた。ガラケー、と言ってもほんの数年前までは主流だった機種ばかりなのだが。

"最安の機種は1,500円か。これなら端末代を払っても十分ペイできるな。"

スマートホンから機種変更することで浮く差額が月約300円、これが16か月で4,800円、それからロッククリア手数料2,100円を差し引いて2,700円以内であれば黒字である。
というかスマートホンを持ち続けることによる「パケット漏れ」のリスクを回避するという意味では、仮に多少赤字であっても買う意義はあるのだけれども、できるなら赤字はない方がいいに決まっている。
(ちなみにこの計算は後で間違っていることが判明する。機種変更の手数料はロッククリア含めて正確には3,150円である。)

子供達で混み合う店を私は一旦後にした。実は本命はこの店ではなく斜め向かいにある別の店なのだった。そこは大手チェーン店であり、ネットで事前に中古携帯取扱有りなことを確認済みであった。その店に向かうべく自転車を自転車置場から引っぱり出す。

道路を渡り店に到着。さすがにさっきの店よりきれいである。ここは基本レンタルビデオ店だが、ゲーム機・ソフトやトレーディングカードなども多く置いてあり、やはり休日の子供達が多くカードゲームに興じている。

中古携帯売り場がどこにあるか最初見つけられず、店内を徘徊。やっと見つけたショーケースには、思ったより多くの種類のガラケーが並べてあった。

"んーやっぱりさっきの店よりは全般的に高いなぁ。まぁでも信頼性からしたらこっちの方がいいんだよなぁ。3,980円のこの機種あたりかなぁ…、ん? これは…"


その機種はショーケースの一番右下隅に、ひっそりと、しかし色彩としては派手なゴールドの背面を上にして置かれていた。機種名、W55T。お値段なんと、980円。

"こっ、これは!"

その場でネットで確認。奇しくも2007年発売の薄型端末。サイズはかなり小さめで、クレジットカードを意識して作られたもののよう。機能的には通話中心の最低限のものだが、今回の目的に照らせば必要十分。発売年の古さと機能の少なさのため、破格の安さで売られているのであった。
問題の旧800MHz帯のサービス終了についても、この機種に関してはギリギリ対象外の模様。まぁこうして売られてるのだからまさか使えないってことはないだろうが。(ネット上だと平気で使えない機種が売られてるので要注意)

すぐさま購入。万が一機種変更に失敗してもこの値段なら許せる。しかし6年前の端末を買って行く男はレジの店員の目にどのように映ったであろうか。

ともあれ、こうして通話用ガラケー探求の旅は成功裡に幕を閉じたのであった。
「足で稼ぐ」。自分のニーズにピッタリの買い物をリアル店舗で達成できたときのある種アナログな悦びは、ネット全盛のこの時代にあっても、変わらぬ価値を保ち続けるのではないだろうか。



…てなわけで、なぜか中途半端に小説口調になったが、今回の計画は最終的に完遂できた。
すぐその足でauショップに赴いて機種変更し、旧スマホは先程ガラケーを買った店で即座に売っ払った(4,000円)。さようならISW13F。君とは最後まで仲良くはなれなかったね。もう二度と富士通の端末は買わないから。

W55Tについては、ネットでの評判を見るとなかなかの名機なようであり、愛用者も多かったようだ。実際手にしてみても薄くて軽くて、それでいて小さ過ぎない感じがとても好印象。
正直な話、ガラケーで通話機能だけは維持するものの、実際は着信転送して『ほぼスマホ』だけを持ち歩こうかなとも思ってたのだが、この小ささ、軽さなら普段持って歩くのもアリかもしれない、と思っている。『ほぼスマホ』自体もかなり軽い端末なので、2台持ちもさほど苦にならなそう。

ちなみに、『ほぼスマホ』ことNE-202については特段言及してこなかったが、まぁ別にどうということはない端末。別に「使えねー!」ってわけではないけど、液晶は青っぽくて安くさいし、電池の持ちも短い。私としては最悪外部モバイルバッテリーと接続してテザリング母艦として活躍してくれればいいと思っているのでいいのだけど、これを1台目として買うとしたらどうか、と問われれば正直微妙。まぁとにかく安いので、安さこそ正義!と割り切れる人なら可、ってところか。

まぁとりあえずまだ手に入れてから日も浅いので、今後の使用感などは追って書くかも。

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