映画「風立ちぬ」感想

H25.7.20 スタジオジブリ最新作「風立ちぬ」を公開日に観た。 はっきり言って面白くなかった。 

(以下ネタバレ注意)
前半は主人公の成長と飛行機への夢について縷々語られ、後半はラブストーリー。その2つの異なる要素が絡み合って、否、全然交わることなくただ生煮え状態で同じ皿に盛られて出されてきた、って感じだった。

前半の飛行機の設計にかける情熱の部分は、さすが監督の趣味がモロに反映されてて、濃密に描かれていたように思う。飛行機好きの人なら興味深く見れただろう。ただ残念ながら私は飛行機全く興味無いので途中飽きちゃった。それでも、この要素をつき詰めていった方が、楽しめる人は限られるかもしれないが、まだ見られる映画になってたと思う。

 後半のラブストーリー、というかこっちが本来の堀辰雄の「風立ちぬ」に沿ったストーリーなんだろうが、ヒコーキLOVEだけじゃさすがに一般受けしないという判断なのかもしれないけど、はっきり言って完全な駄作。ジブリじゃなきゃ、アニメじゃなきゃ描けない要素というのは全く無く、展開もベタなただのメロドラマ。あぁ宮崎監督って結局こーゆーの作りたかったんだー、と正直失望してしまった。
 堀辰雄の「風立ちぬ」は読んでないけど、こういう悪い意味での昭和の日本映画みたいな辛気臭いものではないんじゃないのか、と思う。多分「ゲド戦記」と同じような原作の消化不良を起こしてるんじゃないかと疑う。 エンディングの荒井由美「ひこうき雲」もなんか取って付けた感じだったし。(「ひこうき雲」自体はすごく好きな歌なんだけど)

 総合的には、全くワクワク感もカタルシスも無い映画だった。少なくとも私を含め大衆がジブリ映画に求めているものでは全くなかったように思う。ポニョ以来の「なんかつかみどころのない感じ」が全体を支配していて、観終わったあとはなんか悪夢から醒めたような気分になりました。

 黒澤明の「夢」にしてもそうだけど、映画監督も歳を取ると、一貫したテーマで観客を惹きつけるようなポテンシャルが続かなくなって、こういう雑駁な表現に陥ってしまうのかねぇ。

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